大分交通別大線

●はじめに

 大分別府間の都市間輸送を担う別大線は、1972年に廃止されるまで黒字続きであった。しかし、自動車交通華やかなりし高度経済成長期、別大国道の拡張工事の邪魔になるとして大分県警から軌道の撤去を要請され、廃止となった。

 同じように、国道の渋滞の元凶として警察にやり玉にあげられ廃止に追い込まれた例としては、北海道の定山渓鉄道が挙げられる。定鉄は経営が苦しかったため、道警の突き付けた「幹線道路を立体交差して踏切を解消せよ」という難題を実行することができず、廃止となっている。一方の別大線は経営状態が良好だったため、県警の多少の無理は受け入れられたのではないかと思うのである。

 また、同じく並行する国道が渋滞のメッカとして知られる江ノ電は、現在も存続している。江ノ電と別大線の大きな違いは、専用軌道区間の長さである。江ノ電も廃止が取り沙汰された時期があったが、渋滞する国道を尻目に専用軌道区間を走る江ノ電は、定時輸送可能な交通機関として見直され、一転存続の方向に動いている。一方の別大線は、県警にやり玉に挙げられたかんたん―東別府駅前間こそ専用軌道であるものの、大分、別府両市街地は併用軌道である。これでは道路が渋滞すれば定時輸送は困難になり、バスに対する優位性が失われ、結果別大線存続の理由が無くなってしまう。そこで、大分市中心部と別府市内を専用軌道だけで繋げられたならば、江ノ電のように存続できたのではないかと考え、以下の歴史を捏造した次第である。

●歴史

遅延の温床 併用軌道

 単線区間を抱える別大線にとって、道路の混雑によって併用軌道上で発生した遅延は、対向列車にまで波及することから、厄介な問題であった。特に、別大国道上の区間は渋滞に巻き込まれるリスクが高く、早急な対応が求められた。そこで、大分交通は大分―かんたん間及び東別府駅前―北浜間を専用軌道化することを決定し、まず国鉄が日豊本線を大分まで複線化するのに合わせて1966年に大分―かんたん間を国鉄線沿いに走る新線を開業する。これによって、大分市中心部と別府市内が専用軌道のみで繋がったことになる。この時に、全線を通す系統は新線経由になり、新川経由の併用軌道線は大分駅前―かんたん間の市内系統のみが走ることになった。

定時性の再評価と路面電車からの脱皮

 1971年、別大線廃止の話が持ち上がるが、渋滞する別大国道には目もくれず隣の専用軌道を疾走する別大電車は、定時輸送可能な交通機関として見直され、辛うじて廃止を免れる。廃止の危機を脱した別大線は、続いて、東別府駅前―北浜間の専用軌道化工事に着手するとともに、輸送力増強のため、大分市―別府市系統の車両を路面電車ではなく都市間電車に刷新する。この際、県警に廃止要請を撤回する代償として輸送力増強を命じられたので、大型車両の導入は喫緊の課題であり、最初は全国のインターアーバンから中古車両を譲り受けて運行した。

 しかし、このままでは折角調達した大型電車も専用軌道区間の終点東別府駅前までしか乗り入れられない。軌道法で、併用軌道上を走行する列車の長さは30m以下と規定されているからだ。確かに、京阪京津線やかつての名鉄犬山橋のように明らかに30mを超える長さの列車が併用軌道上を走行する例は存在するが、これは併用軌道上で客扱いをしないがために認められた特例である。別大線もこれらの例に倣って併用軌道上で客扱いをしなければ、きっと30mを超える列車が併用軌道上を走行することが認められるだろう。そこで、専用軌道化工事を行う東別府駅前―北浜間のうち北浜駅周辺を最初に道路上から移設し、東別府駅前―北浜間ノンストップの急行を設定することで軌道法の抜け穴を突く。

 ただ、これはあくまで応急処置である。別大国道上を大型電車が走るようになれば、国道はますます渋滞することは目に見えている。鉄ヲタにとっては京津線のような光景は垂涎ものだろうが、そもそも別大線廃止論は別大国道の渋滞に端を発したのだから、かえって渋滞を悪化させては県警から睨まれるだろう。この「別大国道上を走る大型電車」という光景は、東別府駅前―北浜間の専用軌道化工事が終わり次第解消された。

 また、大型電車を使用して大分別府両市を結ぶ大分―北浜間の系統が新設されたことで、従来の全線通し系統は廃止になり、ラッシュ時のみの運転だった東別府駅前―亀川駅前間の系統が北浜―亀川駅前間に短縮の上終日運転に格上げになった。

 なお、大型電車を収容する車庫は、従来の新川にある車庫では手狭な上、新川―かんたん間で併用軌道上を走行する必要があるため、史実浜脇東浜公園に新設する。

限界への挑戦

 別大線に並行する国鉄日豊本線は幹線ダイヤを組んでいただろうし、JRとなった現在でも特急:普通=1:1というローカル線の典型のようなダイヤである。このような状況下で大分別府間の旅客が別大線に流れるのは極めて自然であり、特にラッシュ時にはすし詰め状態となることが想定される。かといって、国道と山に挟まれた立地では単線区間の複線化もままならないため、ラッシュ時には続行運転を行ってなんとか凌いでいる。これは2013年の今も変わっていない。

●路線

路線

・別大線

大分―春日町―西大分―かんたん―白木―仏崎―田ノ浦―別院前―両郡橋―東別府駅前―浜脇―永石通―別府桟橋―北浜―仲間通―富士見通―境川―餅ヶ浜―国際観光港―春木川―深町―六勝園―聖人ヶ浜―照波園前―弁天前―亀陽泉通―亀川―亀川駅前

・大分市内線

大分駅前―竹町―検察庁前―新川―浜町―春日浦―王子町―大分港フェリーターミナル―西大分―かんたん

系統

すべて各駅停車。主要駅のみ記載。

・別大線

大分―春日町―西大分―かんたん―東別府駅前―北浜

・大分市内線

大分駅前―新川―西大分―かんたん

・亀川線

北浜―亀川駅前

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