国際興業鉄道線

これは架空鉄道です。たとえ実在する団体名がでてきたとしても、関係ありません。

 幼い頃から随分様変わりしたものだ。2両だけ繋いだ銀色の電車。その車体も土埃をまとって鈍い色。夏の強い西日に照らされて、くすんだ電車がぼやぼや輝く。近所中を走り回っていた私は駅員のおじさんに改札を通してもらってホームの蛇口で水を飲んだ。そんな記憶。

 それが今はどうだ。駅の周りにはマンション、団地、住宅地。東京から6両編成の電車がひっきりなしにやってきて、人を吸っては吐いていく。とうとう今度は8両編成にしようという話もある。野田のスタジアムはたくさんのサッカーファンで盛況だ。私が幼い頃に見た姿はどこにもない。だけれども、東京から電車が来ても、畑がマンションに変わっても、この電車は地元の電車、埼玉の電車。この電車は、この街の歴史を見てきたから、この街の暮らしを乗せるから。

路線図

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